特定非営利活動法人 日本ストローベイルハウス協会
女性たちの
ストローベイルハウス工事体験記
Construction experience

女性スタッフの工事体験集です。
ストローベイルハウスの工事では、女性も力を発揮しています。


SBH工事体験記  奈良県明日香村  2006年11月23日〜25日
天野 聖子 32才(埼玉県)


奈良県明日香村。
およそ1400年前、いわゆる「日本」のはじまりともいえる、古代国家が栄えた地。
数々の遺跡や文化、歴史的風土が、古都保存法と、時空を越えた結界に守られたこの地に立てば、日本人なら誰もが、その遺伝子の中にある記憶を少なからず呼び起こされ、ノスタルジックな感情をもたずにはいられない。
今回のワークショップは、そんな明日香村を流れる飛鳥川上流にある、栢森という小さな古い集落にたたずむ、築250年の古民家の敷地内に陶芸小屋を創るというもの。
工法はLoad Bearing。施工は2日間で一日目がわら壁づくり、2日目に左官壁塗り。
施主の田中さんは昨年の京都でのワークショップでの参加者。
先日学ぶ立場でストローベイルに触れた方が、もう早速セルフビルドに着工し、そして今回私達が学ぶ機会を与えてもらっている。とても素敵な循環がそこにはあり、これもストローベイルハウスのよさのひとつなのかもしれないと早くも感動。
前日、古代人の息遣いすら聞こえてきそうなこの土地に足を踏み入れたうえ、初めて「わらの家を建てる」というセミナーを受け、すっかり興奮してしまった寝不足がちな参加者男子五5名、女子7名も元気に起床。
昨晩湿らせた雨が降り止んでいることを感謝して、ベースキャンプとなる飛鳥寺の研修会館から現場へと飛び出していく。12月もほど近い冷たい朝だが、みんな興奮していて寒さも感じないのかニコニコ。
現場は、飛鳥川沿いの古いお屋敷地内。施主の田中さんが自ら改築中の母屋に、離れがぐるっと囲む庭の真ん中に、これまた田中さんのセルフビルドの基礎に明日香石が綺麗に積まれてあった。 
ここに建てるんだ。またもや感動。
現場に入って感じたが、「女の子が以外と多いんだぁ」って事にびっくり。確かに、ストローベイルハウスビルドは建築に携わったことさえない女性まで参加できる工法。まぁ、だから私もここに居るんだけど。
衣食住の衣、食、の部分は出来るとしても住は女の身ではセルフは考えもしなかった。でも藁はその固定概念を取り去ってくれた。全く藁には驚かされることばかりである。
早速その「藁ブロック」とゆかいな仲間達のゆかいな格闘がはじまった。 
田中家の半地下の納屋は準備されたストローベイルが積みあがり、まるで昔読んだヨーロッパの絵本のよう。
きれい。女性陣からは黄色い歓声があがる。
持ってみる。軽い。次は教えられたとおり、必要な大きさに切ってみる。なんだ、できるじゃん。
まるでLEGOでも積み上げるように楽しくベイルを積んでいく。 
はじめは逐一リーダーに伺いながら進めていたけれど、少しずつ慣れてきて、あーでもないこーでもないって皆で相談し始める。皆のテンションもどんどん上がっていく。藁で壁ができていくって事が面白くって仕方がないんだ。
数々の興奮の後、ベイル積み工程、そしてトップ・プレート取り付け終了。今日の作業はここまで。
今朝、ここに来た時は基礎があっただけだった…と、四方出来上がった藁の壁をしみじみ眺めてみる。そしてまた感動。 
何世紀も前から形を変えずに独自の時間軸で静かに時が流れているような、この小さな山奥の集落に太陽が沈む頃、私達は田中さんご一家と、新しく積み上がったストローベイル達にお礼を言って現場を後にした。
藁という軽く小さな素材の集合体で家を作れてしまうんだと実感したこの日、自分の中の何か小さな自信と希望が大きく育つのではないかと感じた日でもあった。
2日目。 もうすっかり明日香っ子になった気分になっている。田中邸までの道すがら、大きく広がる美しい稲淵の棚田も、見慣れた場所のような気にさえなる。
「おはようございます」 元気よく田中邸に入っていくと、そこには沢山の新品のパレットがずらりとならんでいる。田中さんの手作りらしい。この、人数分のパレットもそうだが、休憩時やランチタイムのお茶やお茶菓子など、ワークショップを受け入れる側もひと仕事だなぁと、施主さんのお心遣いに感謝する。
この日は左官工程。前日せっせと積み上げたベイルの壁に、外側は防水性の高い漆喰を塗り、内側には土に藁を混ぜて塗ることに。塗り始めると、おや?どうしたことだろう? 昨日の大興奮とは打って変わって一同静かなもの。見回すと皆とても真剣な顔で漆喰と格闘中。どうやら楽しいらしい。休憩だよって言ってるのに手を止めるのも戸惑うくらい、すごい集中力。とくに女性陣。女性ってどうやら左官作業好きな人多いみたい。
田中家のお子さんやお父様、お友達や私達JASBH一同みんなで和気あいあいあい、どんどん塗る手は進んでいき、夕方前には下塗り工程終了。これぞストローベイルならではのグローバルコミュニケーション!いい時間を体験させていただきました。
250歳の年の差を経て生まれたこの真っ白い小屋は今日から田中邸の仲間入り。
先進国として「質より量」の大量生産ケミカル住宅が流行った日本の近年。そんな時代はすっかり飛び越えて、自然に逆らうことなく、自然の持っている力をうまく取り込んだ建築…この、明日香村にある古くて新しい建物たちは、何か土着的、原始的なところで繋がりをみせている。 
そして、何よりも私は、この建物たちの主田中さんの、自然と調和し生きていこうとするスピリット、姿勢、そしてそれをリアルに現実化しているライフスタイルに強くインスパイアされた。
ストローベイルにたずさわる。意識を拡大して地球レベルで物を見聞きしようとそこに立った時、道の先には先駆者達が手を振って待っている。愛しき地球人たち。馬上さんはきっと道を作ってくれた人。私はその道を踏み固めてついていき、そこに新しい道を見つけていく。古代から繋がり、未来へと続く道。
ストローベイルハウス〜この家作りを体験したメンバーの顔は、3日前明日香入りした時の未知なるものへの期待の笑顔とはまた違った、多くの可能性を秘めた期待と自信に溢れる笑顔に変わっていた。
多謝。


SBH工事体験記  福島県須賀川市  2005年10月21日〜30日
坂本 幸美 25才(長野県)

数年前、何気なく見ていたTV番組で、初めてストローベイルハウスの存在を知った。
「わらで家を造る。」 信じられないような話しだった。
頭の中に、忘れられずに残った わらの家 に触れてみたくなり、那須高原でのセミナーを受け、今回のワークショップに参加するきっかけを頂いた。
2005年10月21日(金)宿泊地である福島県須賀川市藤沼湖公園内のコテージに、JSBHAの馬上さん、スタッフの皆さん、ワークショップ参加者の方々が、わらの家をつくるために全国から集まった。
現場は宿泊地から車で20分ほど。湖のほとりに造られるペット公園内だ。
22日(土)。いよいよストローベイルとの対面の時。「わらだ....。」両腕いっぱいに抱えたそれは、あったかいわらそのものだった。
ロードベアリングとノンロードベアリングの両方を体験する事の出来る今回、始めに全員でロードベアリングでの工程、注意点などの説明を受けた後、各班に分かれて、いよいよワーク開始だ。
暫くするとあちらこちらから、「ニードルさすよ-」 「はい抜いていいよ-」 「気をつけてね-」などの声が飛び交い、作業もどんどんスピードアップ。1日で全ての面にストローベイルが、ぎっしりと敷き詰められ、壁?が出来上がってしまった。人数が多いにせよ早い、速すぎる。まさにあっという間だ。そして何より、楽しい。楽しすぎる。わらを上から踏んづけたり、押したり、支えたり、笑っている間に1日の作業は終わってしまう。
23日(日)。はじめて手にするこてとパレットでの左官作業。わらに直接押し込みながら、漆喰を塗りこんでいく。始めは遠慮しながら、ちょっとづつ、ちょっとづつ。そしてだんだん豪快に!楽しい。今日も楽しい。
あちらこちらから聞こえてくる笑い声。突然の雨などものともしない、1人1人の真剣な瞳。作業は順調に進み、夕方にはバーべキュー大会で大いに盛り上がった。そして2泊3日のワークショップは、あまりにあっという間に終了してしまった。
次の日からは、スタッフだけでの作業だ。25名いない現場は、なんだかちょっと淋しくなった。
天候がいまいちすぐれず、乾いてくれない壁の様子を見ながら、内装のベンチ、内壁作り、外壁の2度塗り。と毎日の作業は暗くなるまで行われた。
いつまでたっても左官が上手く出来ない私は、皆の半分ほどのペース。何とか追いつこうとすると、穴のあいたムラのあるでこぼこ壁になってしまう。焦る私に、「いいんだよ、自分のペースで。」と声を掛けてくれるスタッフがいた。なんとも嬉しい、あたたかい言葉だった。
後半はとても天気も良く、気持ちのいい日が続いた。塗った漆喰はあっという間に乾いていく。役割分担されたベテランスタッフの、息の合った仕事振りには、思わず見とれてしまった。
気が付くと、10日間の合宿は終わり、目の前には真っ白な異国の建物が...。
(建物の周りに敷き詰められた金色のわら。まるで意思をもったかの様な真っ白い壁。青空の中でその姿は、異国だった。)
10日前までは、構造とか、技術とか、そういうものを少しでも学ぼうとして、知りたくて、私は参加した。
でも、こうしてストローベイルハウスに実際に関わって、触れて、日に日に姿を変えていくその様子と、参加している方たちとの毎日の中で、それよりも、もっともっと大切な事が、先にあるんじゃないか。って思うようになった。
今までも、自然や地球を大切にしていかなければいけない。ってことは思ってはいた。でも自然って何だろう?地球って何だろう?
今、ストローベイルハウスは確実に必要とされている。
家を建てることで、そこに住む人や、集まる人々が、考え影響されていく。凄い事だ。
私は、そんな わらの家 と出会えた事が嬉しい。
わらの家が持つその魅力を、もっと肌で感じていきたい。


SBH工事体験記  仙台 2003年12月1日〜12月24日
安藤 円 25才(埼玉県)

そば屋「草庵」
日本では5件目最北のストローベイルハウスが、仙台市は秋保温泉にほど近いところに建てられた。
今までには住宅や教会が建てられてきたが今回は初の店舗となる。その名も「草庵」、草の庵のおそば屋さんである。施主である佐藤さんは会社勤めを退職後、持続可能な生活体系を実現すべく藁の家に出会った。
2003年12月1日、12人のStraw balerが秋保に集まった。
秋保は仙台市と蔵王山麓を結ぶ山中にあり、古くは山形の山寺へと向かう街道に面していた。「草庵」の敷地の周りは小高い山を背後に従え、家の横手には山からの沢水がのび、大きく清んだため池が作られている。
季節柄風景は冬の色に染まっていたが、春の頃には花々山菜に囲まれる桃源郷のようになることだろう。
近くには秋保大滝があり、遠くには蔵王連峰が白くそびえている。
山の中なので、仙台市内よりは気温が低く降雪量も多いとのことだったが、工事始めは穏やかな晴天が続いた。予想より暖かい気候に安心しひとつの心配を忘れようとした。しかし12月9日、秋保で初雪が降った。心配というのは雪や寒さで外壁材である粘土が凍ってしまわないかということだった。不凍液は入っているが、コテで塗って乾く前に凍ってしまっては左官はできない。本格的な冬将軍はまだにしても、初雪が降った頃から気温はぐんと下がった。できるところまでやる、できれば最後まで壁塗りを仕上げたいというのが皆の希望だった。
Straw Baleワーク開始
我々が、現場で作業に入るのは、基礎と非壁式構造の骨組みができている状態からスタートする。同時進行で内部の工事には地元の大工さんが入る。
ベイルが到着すると、さっそく積み上げの作業に入るのだが、今回は形が不揃いのものが多かったので選別作業から始まった。
A班とB班の2チームに分かれ、4〜5人でBalerasing(藁積み工程)を進めていくと混乱しないでまとまりのある動きになる。ベイルを積むのに2人、ベイルをカットするひと1人、ベイルを運んでくるひと1人、そしてリーダー1人がいればやりやすいだろう。
3週間の工程で、藁壁積みと土壁の下塗り・上塗りそれぞれだいたい1週間づつかかる。
まるででっかい工作を作っている気分
わらのブロックを積み重ねていくとそこはもう建築現場ではなくてどこかの畑で農作業をしている気になってくる。そこでわかったことは手に触れるものの重要さだった。金属が固く冷たいのに対して、わらは柔らかく暖かい。わらのブロックに太陽エネルギーが凝縮されているのが体から伝わってくる。実際にこの家に住み、毎日この暖かさを感じられたらどんなにいいかと建てながら佐藤さんがうらやましくなる。
Straw bale Tour
SBHの工事には全国各地からスタッフが集まり、期間中一つの家で共同生活をすることになる。20代から50代まで年齢層も様々で、今回は12人の中の8名が20代と若いパワーにあふれていた。
朝の7時には起床・朝食、9時前には現場に入る。何よりも楽しみなのはやっぱり食事で、体を動かすといつもの何倍もご飯がおいしくなる。
晴れてる日などは藁の上での昼寝が欠かせない。基本的に暗くなったらその日の作業は終了で、疲れて冷え切った体は帰り道の秋保温泉で癒された。
宿舎に帰り、夕食を食べ終わるとフリーの時間になる。毎日のように早く寝ようかと思うのだけれどつい遅くなるまで話し込むのが常だった。それが楽しい時間でもあり学びになる。
3週間の間には休日もあり、休みが近づくと各々休日プランを練り始める。どこに行こうかなに食べようか温泉入って観光だ。というわけで、仙台は松島めぐりに蔵王参り、市内は有名牛タン屋とこの土地ならではの思い出が増えてゆく。
大雪で作業ができない日などは現場近くの探検に出かけて虹の谷を見つけたこともあった。行く先々で現れる虹は一生分見てしまったかのようで幸せな気分にさせてくれた
厚い壁に熱い想い
藁壁が積み上げられたら土壁を2度塗りしてゆく工程にはいる。
Prastering(壁塗り)はコテを右手に左にパレット頭にゴーグル、手には軍手で準備は完璧。下塗りは藁の壁になじむよう力を込めて塗りいれる。凹凸もそのまま壁の表情として残す。上塗りは下塗りの表情に合わせて丁寧に表面をなめしてゆくのだが曲線の美しさを残した丸い壁に仕上げるのはなかなか難しい。それでも光りの具合で表情を変える壁はあきることなく生きつづける。心配していた粘土も寒さで凍ることはなかった。だが、乾燥が遅く、乾き具合が均等ではなかったので途中まだらに壁が変色したが、乾くにしたがって元の色に落ち着いた。
こうして完成した藁の家はやわらかい空間をもつようになる。
雨にも負けず、風にも負けず、冬の寒さにも耐え、夏の暑さから守ってくれる。そんな家に私も住みたい。
来るべき循環型社会は女性が主役!
ストローベイルの作業現場は男性も女性も同じ仕事をする。もちろん力不足な面で男性の力は欠かせない。ただ、女性的な感覚からSBHを見るとなにか新しい流れを感じる。
女性というのは生命を産み育て、命を循環させることを体で体現している。
限りある資源ばかりを使うのではなく、かぎりなく、短期間で循環する素材で衣食住をまかなっていかなければこの地球上に住めなくなってしまうのではないかという危機感を誰もが持ち始めている。
このままではいけないとわかっていながらも、未来へつながるライフスタイルを確立できていない。そういう意味で今まで男性の仕事とされてきた、衣食住の最後の家作りに女性が入ることによって未来のライフスタイルが完成して行くのではないだろうか。


SBH工事体験記  金沢  2003年10月21日〜11月11日
金田とよみ 24才(大阪府)

パラパラと小雨が降る中、日本初、ストローベイルでの教会造りが始まった。
教会というだけあり、建築面積が約90坪、高さ8.5Mと学校の体育館を少し小さくしたぐらいの大きさはある。
使用する藁ブロック(ベイル)の数、およそ1100個。1個の重さが約18kgのベイルを11段積み上げ、漆喰を2度塗り重ねていくという行程だ。
私を含め半分以上がストローベイル初参加のスタッフ12人に与えられた期間は3週間。
金槌さえ殆ど手にした事のなかった私にできるのかと不安を覚えたが、作業を進めて行くうちに、それが"楽しい"に変化していった。
2日目以降は比較的天候に恵まれ、10月末というのに気付けば半袖姿で作業をしていた。特に屋根の上は太陽の照り返しもきつく体中汗が滲み出たが、辺りを見渡すと柿の木畑や田んぼがあり、その向こうにある線路から踏切の音がそよ風に乗って聞こえてくる。なんとものどかな風景に思わず手を休め浸ってしまう。
そんな中、教会員の手も借りながらベイル積みがスタートされた。
まず、防水紙を敷いていく。これは藁にとって一番の大敵、水の対策のため。雨に濡れると発酵して腐ってしまう恐れがあるので、雨対策には十分注意を払いながら作業していく。
そして、レンガ積みのように互い違いに積んでいく。
途中、サイズの小さいベイルが必要になる。その場合、ニードル(長い鉄棒)という縫い針をベイルに刺し、その先端にロープを通しニードルを引く。そうすると、ベイルに一本のロープが通る。それを結びベイルを切断すれば完成。
このように全て手作業で進められていった。この行程が10日間も続けば疲労も出てくるはずだが、藁を積み上げる時は掛け声を出しあったり、横一列平行になるようにみんなで藁の上を歌いながら行進したりと、現場の雰囲気は常に笑いがあり明るかった。
しかし、一歩教会に足を踏み入れると藁壁効果により遮音性と断熱性があるため、違う雰囲気が漂っていた。まるでキリスト様の腕に包まれているようなぬくもりが感じられ、安堵感で心が満たされる。その雰囲気の中、太陽の匂いがする藁の上に寝転がり昼寝をするのはこの上ない最高の贅沢だ。
11月を迎え紅葉も盛んになり始めた頃、私たち12使徒の行程も順調に進み、岩のようなびくともしない壁が出来上がった。
さあ、次はお絵書きの時間だ。石灰・のり・スサからなる漆喰をベニア板で作ったパレットにのせ、コテで塗っていく。藁に押し込みながら塗らないとボトボトと剥がれてくる。思ったよりも力のいる作業だ。
お絵書きなら任せてと教会員の子供たちの手も加わり、巨大なキャンバスを塗り上げていった。そのうち、上半身裸になって塗っている子や、漆喰を丸めて「お団子はいらんかね〜」とお団子屋をする子が出てきた。みんな「おかわりー」と言いながら平らげていった。気が付けば藁が完全に見えなくなっていて、綺麗な曲線かかった純白の壁が完成された。
ストローベイルの魅力は自然素材だけではなく、経験者や年齢に関わらず誰しもが手を加えられるという親しみも兼ねており、人と自然とが結び付いてこそ真価が見られるのだなと改めて思った。
最終日も雨が降った。私達は「楽しませて頂いてありがとう」と一礼し教会を去った。
『教会はキリストのからだ』と聖書には書いてある。キリスト様が初日の雨によって地上に舞い降りてきて、私達が教会を造りあげた褒美に、楽しさと感謝する気持ちを与えて下さり、この雨で天に帰っていった気がする。


SBH工事体験記  那須塩原  2003年4月7日〜5月7日
竹内 沙織 23才(長野県)

ドキドキ☆ドキ。ドキドキ。。。。去年の四賀村のワークッショップから1年ぶりのストローベイルづくりに、3週間の共同生活。
期待膨らませながら、私は初の栃木疾走でちょっとテン張り気味で、一人で緊張汗かきまくりだった。
今回一緒に作業するメンバーと初顔合わせ、知った顔に知らない顔、みんな私より10は年上で貫禄ばっちり、子連れ夫婦もいる。てっきり同世代が集合するものだとばかり思っていた私はちょっとビクついてしまったのが正直なところ。ま、初日はそんなんで緊張MAXだったのでした。
作業初日は、女性陣は遅れて出発。車の運転を任されたのものの、宿舎から現場までの道のりがあやふやで、勘を頼りに走ってはみるが知らない道ばかり…。なんとか現場に着いたもののちょこっとくたびれてしまった。これから本番だって言うのに…。
現場は、牧草地を抜けた林の中で、思い浮かべていた通りの別荘地で、静かで爽やかな場所だった。
住宅は木造の骨組みがすでに建ち上がり、大工さんが汗を流して働いている風景は何処の住宅の建設現場とも変わらない。これが日本で3棟目のストローベイルハウスになろうとは...。さぁ、ここからがストローベイル本番!!
現場にトラックいっぱいに積み上げられたベイルが次々と運ばれてきた。「この光景が私は好きだなぁ。」って浸ってる間もなくベイル降ろし開始。気合十分!!なんだけど、なんせ体は鈍ってますんで、ベイル1個の重さにヨロヨロしちゃって、お邪魔虫???状態で。藁ホコリに揉まれながらもやっと腰に力が入ってきたかなと思ったところでベイル降ろしが終わってしまった。
みんな(おやじ達)の仕事の早いこと。私一人出遅れた感じがしてちょっと負けてらんいっ!!。私だってっっっっッ!!
気合入れなおして早速、次の工程へ基礎に防水シートを被せタッカーでバチバチ打ち込んで留めていく。ハンドタッカーしか知らなかった私にとって、大工道具のエアータッカーはものすごく輝いて見えた。このタッカーのおかげで格段と作業効率が良くなった。
防水シートの上にベイルを積み上げていく。今回のベイルはなかなか良質で積みやすかった。って言ってもベイルのかたちは不揃いなので積んでいくとどうしても壁面や高さに凸凹がでてくる。そこはベイルを蹴ったり殴ったりジャンプしたり、まさに格闘系な調整を行いながら、かつ繊細にベイルを積み上げていく。こんな壁づくり他では有り得ない。格闘派?な私だけにこの作業は楽しくて、自ら進んで蹴りにジャンプに夢中になって、着ていたつなぎはもう汗だくだく、藁まみれ。
ベイル積み作業も終盤―ベイル積みにも慣れ、順調に積み上げていった。気が付くと足場は高くなり、ベイルに杭を打ち込む時にはグラッと下に落ちてしまうんじゃないかと、ちょっぴりとヒヤヒヤしながらそんなスリルも楽しみながら。一通り積み上がると、更にベイルをPPテープや鉄筋やらで固定して藁壁を頑丈にしていく。
隙間には藁を突っ込んで、防水シートは番線で押さえながらの地道な作業が続いた。昼の暖かい陽射しにうとうとしながらも。。。
そんなこんなで外壁は見事な藁壁がそり建ち、思わずハグハグしたくなるような暖かい壁は、ここに土を塗ってしまうのが惜しい。土を塗ってしまう前にしかと目に焼き付けて。
さぁお待ちかね。コテにパレットに左官モードでいざ出陣すでに練られた袋詰めの白い粘土を直接コテで塗っていく。藁がピンピンしていて下塗りは塗りにくい。跳ね返りの粘土が何度口の中に入ったことか。コテ塗りは初めてだったのもあって、直接手でゴリゴリ塗っていくのに比べて塗りにくかった。でも、コテを硬い鉄ゴテから柔らかいステンレスゴテに変えてからは塗りのスピードが大幅にUP。藁の凸凹にはステンのしなりが調子いい。
粘土は1体20キロもあり、運ぶときは大変だった。あまりの重さになんだかおかしくてツボにはいちゃって、一人でゲラゲラ笑いながら中腰で粘土を抱えながら運ぶ姿は奇怪極まりなく、そんな私の姿を見ていたたまれなくなったのか、粘土は力持ちが運んでくれた。お陰で楽してしまいましたが、そこは塗りでカバーを。
一日1面仕上げのペースで順調に壁は塗られていった。時には藁面以外の軒下の狭い場所に入って屋根の照り返しや足場の傾斜に苦戦しながら。始めは楽しくおしゃべりしながら塗っていても、塗り進めるにつれ軽い瞑想状態入り込んでいって周りの音も聞こえなかった。ピンチッ!!
下塗りも終わり、次は仕上げ塗り。仕上げは下塗り同様、袋詰めの茶色の粘土を塗っていくのだけど、上塗り材が思うように塗れない。これはピンチ!!
急遽粘土屋の社長も参戦して、現場で粘土の調合をおこなった。みんな不安の色は隠せず、現場の空気は青かった。しかし、社長の「すごいのできちゃうからぁ!」の一言がみんなの心を一つにさせた。そして実際、調合した粘土は調子良かった。
しっかり働いた後はこれ毎日、その日の作業を終え、お腹をすかして宿舎に帰ると美味しいご飯が待っている。みんな大食いで食べるのも早く、一緒に食べているとこっちまで焦ってついつい食べ過ぎてガツいてしまった。お陰で毎日満腹。日が経つにつれ、次第に私の満腹中枢は崩壊していき底なしの胃に恐怖さえ覚えた。
仕事終わりと言えば近場の温泉にもよく行った。汗をかいた後の温泉は格別でいろんな温泉に行ったが、何度も通ったのが"ピラミッド温泉"だった。その名の通り建物はピラミッド型で、入り口にはなぜか偽ミッキーマウスが待ち構えている。もう見るからに違和感満開で、建物の中は様々なジャンルの骨董品で溢れ、怪しさ100%この上なしだった。肝心のお湯はと言うと、お湯に浮かんでいるUFO(湯宝)とピラミッドパワーのせいか、いいお湯で癒された。気になった方は是非足を運んで頂きたい。
そしてストローベイル工事が終了。上塗りも終わり、藁壁の表面は滑らかなうねりをみせ、ストローベイル独特の表情に仕上がった。最後に養生テープをはがしてストローベイルのすべての工事工程は終了した。
内装工事はまだ終わっておらず、住宅全体の完成を見られないのが残念ではあるが、達成感と満足感。これで終わってしまったのかと、少〜し寂しくなった。ここに暮らせる施主さんがなんとも羨ましい限り。ここに居ついてやろうかと思うくらい。ま、そのうち自分でつくるのでそこは我慢して。
ワークを通しての出会いなど学生上がりで社会慣れしてない私にとって、この3週間はとても有意義で新鮮だった。おまけに、同年代としか親しく接する機会のなかった私、今回のメンバー達との生活に始めは構えてしまっていたけど、共に生活するうちに、気を使うこともなく(もうちょっと気を使った方がいいって話だけど)仲良くなれた。レギュラースタッフの他にもエキストラとして短期で参加する人も何人もいた。しかしどの人もみんなキャラが濃ゆくって、押されっぱなしだった。私だって負けてなかったと思う。何よりもみんな年を重ねているだけあって、私の知らない事やいろんな体験談、時には???な話しもあったけど、聞いてて面白かった。おまけに勉強になって。ストローベイルを通してのこのいろんな出会いは刺激受けっぱなし、学びっぱなし、吸収しっぱなしだった。3週間のワークはあっという間に過ぎ、私の夢は膨らむばかりで。「私はまだまだ若い。おぉ〜。地球の未来は明るいぞー!!!」なんつって、思いながら私は那須を跡にするのでした。
ストローベイルにカンパイ ☆☆☆                       
おしまい。チャンチャン。。。。。


ストローベイルハウスの幸せ  (2001年7月1日)
大木奈緒美 24才(東京都豊島区


みなさんは、自分の部屋でめいっぱい深呼吸したことはありますか?緑生い茂る山や果てしなく広がる海ではなくて、あなたにいちばん身近な部屋の中で。
4月半ば、ストローベイルハウス・ワークショップが行われたのは栃木県益子町。益子焼きで有名な街だ。
春の穏やかな風をぬけてメインストリートに車を走らせると、1階がガラス張りになったギャラリー風の建物が目に飛び込んでくる。2階にあたる部分に見えるのは入道雲のように柔らかそうな壁。いびつな、でも軽やかな真っ白い物体は、無機質なガラスの上で驚くほど自由な存在だった。
そう、これが私とストローベイルハウスとの初めての出会いだ。生き物みたいにうねる白雲は、バルコニーを囲う藁の壁。およそ縦50cm×横90cm×高さ40cmほどの藁のブロック(ベイル)を積み上げて、3回にわたって粘土と漆喰を塗り重ねた末、石のように堅くなっている。藁というからにはもう少しヤワな側面を想像してたんだけど。
藁壁は家屋と庭をぐるり囲んでいるのだが、裏手の部分はまだ茶色い粘土がむき出しの状態。この壁に漆喰を塗って白くお化粧してあげるのが、今回の私たち(男性4人、女性3人)の課題だ。たった2泊3日でいったい作業は完成するのだろうか?
作業に取り掛かる前にまずは相手を知ることから始めようと、施主の瀬田さんが室内を案内してくれた。リビングからキッチンにかけての広々としたスペースは、吹き抜けの心地よい空間。煉瓦造りの暖炉があって、大きな窓からは贅沢に光が降り注ぐ。タイルが敷き詰められたバスルームは、白と紺のコントラストが美しい。
この家が藁で?
一見ストローベイルハウスであるという事実を忘れてしまうかのようなモダンなつくりに、圧倒されてしばし茫然。
しかし目を凝らすと、白い壁には所々にうっすらと藁が浮かび上がり、さらに壁の中身が見えるようにつくられた小さな窓からは、しっかりベイルが覗いている。これが真実の窓(WINDOW OF TRUTH)。らしくなくても歴とした藁の家なんだってことを証明するための重要な役目を担っている。
家の中は、まったくと言っていいほど外界の音が聞こえない。ちょうど深海に潜った時ような無の世界。暖房もつけていないのに、ぽかぽかして大地の温もりが伝わってくるようだ。驚くべき保温効果に思わずジャケットを脱ぐ。
体の緊張がほどけて大きく息を吸い込む。空気、そのものがウマイ。100%自然素材でできている家という安心感からか、息をすればするほど体の中まできれいになってく気がする。この日は、家の中で深呼吸するという初めての体験に酔いしれた。
翌日いよいよ漆喰塗りの作業に取り掛かる。石灰とすさ(藁を細かくしたもの)の入った漆喰を水とあわせて丹念にこねる。ケーキの生地を混ぜ合わせるように、ダマにならないよう注意。水分を含んでいっそう白く艶を帯びた漆喰は思いのほか重く、混ぜ棒として使った鍬がなかなか動かない。からだ全体を使って力を込めるのだが、最後まで混ぜきれなかったダマは手でつぶしていく。7人全員が顔を突き合わせてトレイに手を突っ込んで。
不思議なことに漆喰の固まりがなくなればなくなるほど、みんなの心もゆるんで話がはずむ。大島でサーフィン三昧しつつ会社を営む青年実業家。おじいちゃんの世話なら任せて!とガッツポーズをきめる看護婦さん。北海道ニセコで売り上げ目標1日5000円でバーを切り盛りする若きオーナー。そういえば、この時になってはじめて、お互いの身の上を告白したような気がする。泥んこ遊びのメリットってこんなところにもあったみたい。
たくさんのおしゃべりを聞いた漆喰はご機嫌で、程よい弾力と滑らかさを備えている。
さあ、いよいよ塗るぞ。
今回は鏝は使わず、手で勝負。ゴム手袋を付けてバケツに波波とつがれた漆喰をすくって、壁にのばしていく。下地の粘土との間に隙間ができないように、細かい凹凸を埋めながらすり込むかんじで力強く。垂直の面にモノをくっつけるのは予想以上に難しくて、何度もボトボト落としながらなんとか定着させる。左官やさんってすごい職人だ。 これまで壁に落書きしたり、服を泥んこにすることにどこか後ろめたさを感じながら育ってきた私は、当然はじめは戸惑った。しかし、壁塗りといえども意外に力が要る作業にムキになるうち、習慣とかそういうものに縛られるのが馬鹿らしくなってきた。服が汚れようが、手がカピカピになろうが洗えば済む。それよりも今後何十年と存在し続けなければならない家を、丁寧に仕上げることの方が意味のあることのように思えたのだ。
迷いがなくなって、身の軽くなった私は一心不乱に壁を塗る。漆喰が半乾きになったら手でなぞって細かい突起を削り取る。手袋をした手のひらがやすりの代りになるのだ。壁も人間と同じで、「きれいになってね」と気持ちを込めて触れてあげればあげるほど、つるつるのもち肌になっていく。
最後に漆喰を水でひたひたになるまで薄めた液体で、もう一度上塗りをかけると、色白のキメ細やかな壁の出来上がり。たった48時間で粘土むき出しの状態から美しく大変身だ。
太陽を受けてつややかに輝く壁を前に、なんとも誇らしげな気分に浸ったのを覚えている。
素人でも結構やるじゃないか。 こうして私たちのストローベイルハウス大作戦は無事終了し、いよいよ玄関を飾る大きな柱の除幕式を迎えることになった。掛け声に合わせていっきに幕を降ろすと、深みのある褐色の巨木が堂々とそそり立っていた。あの瞬間の瀬田さんの笑顔といったら。顔じゅうの筋肉をゆるめて満面の笑みをたたえた一家の主を囲んで、親子3人が記念撮影する姿を見て思った。
深呼吸できるおうちをつくってみよう。



ストローベイルハウスづくり体験記  (2007年7月6日 )
舞原早苗   26才(東京都多摩市) 


背の高い林が途切れると広大な麦畑や牧草地が視界に飛び込んでくる。その向こうには那須岳の雄大なシルエットだ。
西那須野塩原インターから車で約20分。車窓からこんな気持ちのいい風景に見とれていると、日本初のストローベイルハウス建築現場が現れる。今回は7月末のワークショップに向けたリハーサルのために、スタッフ6人で訪れた。
アメリカのホームページや本をいくら見て憧れていも、実際にやってみなければ話にならない。待ちに待った実践の時を迎えて、すでに力強い日差しのなか「よーし、やったるぞぉー」と気合も入ってくる。
早速、今回稲藁のベイルを提供してくれることになった近くの酪農家のもとに軽トラックを走らせる。全体では300個ほど使用するが、リハーサルではそのうちの40個ほどのベイルで、コーナーの一角を積み上げる予定だ。
納屋に近づくと、ふんわりとあの稲藁独特の匂いに包まれる。
高さ約35cm、横幅が1m近くあるストローベイルを実際手にするのは初めてだ。藁を束ねる2本の紐をつかむとずっしりと手に食い込む。けれど決して女性が持てない重さではない。
何ごとかと牛たちが大きな目で見つめる中、次々と荷台に運び込み、4人であっという間に積み終えた。
今回のワークショップで作るのはお風呂場。今まで柱と屋根だけだった納屋にストローベイルで壁を作り、9m四方の立派な浴場にするのだ。今後、現在の保育園舎を宿泊施設にしたときに活躍することになる。
基礎はすでに業者に頼んで出来上がっていた。そこに防水紙を敷き、穫礎から出るアンカー(鉄筋棒)に刺しながらベイルを鼻べていくのがまず最初の作業だ。
ずれないように、慎重に。一段目はラス網を巻きつけ防水紙を固定する。2段目、3段目と、ベイルを積みあげるのは皆で力を合わせれば実にたやすい。
積んだベールの上に乗っかって踏み固め、竹の棒(または鉄筋棒)を上からハンマーで打ってベイル間を突き刺す。そしてまた載せる。
ただの藁のかたまりだったものが、次第に「壁」という別の存在に変わっていく様子は、見ていてわくわくするものだ。 スタッフは男女半数ずつ、年齢も経歴も全くバラバラ。一緒に作業していると、まさに家族総出で家作りといった感じだ。
いろいろな問題が持ち上がるたびにそれぞれの知恵を出し合う。想像以上に強靭な素材である藁束に、力任せに棒を差し込んでもなかなか入っていかずフーフー言っていると、「入らなければね、ちょっとねじってみるといいのよ」と主婦であるNさん。その通りににしてみてすっと入っていったときは、「さすがぁ〜」と、なぜかとても感心してしまった。だれもがこの家づくりに立派に役立っている。いろんな年代の男女がともに作業するというこんな楽しみを、都会育ちの私は初めて味わっていた。
途中何度も雷雨に見舞われ、ブルーシートを屋根から垂らす作業に手間取りもしたが、初日に何とか上までベールを積み上げることができた。
泥まみれ、藁まみれの体は、やはり温泉で癒さなければ。この辺りは車で2,30分行けばいい温泉がある(ワークショップも、もちろん温泉付き)。夢中で作業していて気がつかなかったけれど、露出していた腕と足は擦り傷だらけ。(やはり作業は長袖長ズボンが基本だね)そして、そんな労働のあとの露天風呂が最高なのは言うまでもなく・・・。
二日目。朝はさわやかに晴れ渡っていてもやはり日中はゴロゴロと雷に雨。でも、昨日のうちにしっかりとビニールシートで雨対策をしていたので大丈夫。今日は、昨日積み上げたベールをしっかりと固定する作業から始まる。
ベルトを使って上下を圧縮。そして壁の内と外に竹を立てて間に紐を通し、きつく結んで横も固定する。厚い壁の向こうとこちらでペアになり、ストローニードルという棒を刺して紐を通す。ニードルが突き出る反対側の人には充分注意が必要だ。声を掛け合って息を合わせる。段々とみんなコツがつかめてくる。
壁が頼もしいくらい固定されれば、さあ、今度は粘土の出番。「わたしもやらせて!」の声があがって、がぜん賑やかになる。もちろん私も粘土に触れるのは小学生の泥遊び以来。まず粘土には藁くずと水を加えてよく練る。「これこれ、これを楽しみにしていたんだよね」と手を突っ込めば、ぬるりとした触感にひんやりとした冷たさが気持ちいい。恐る恐る手にとって藁壁の表面に押し付けると、藁どうしが引きつけあうように自然に馴染んでいく。ぺたぺたと塗り広げれば、たちまちそれらしい風合いの壁が現れる。
夢中で粘土遊び(?)をしていると、いつしか辺りの雨に煙る木立も、農園も、夕映えの金色に包まれていた。リハーサルはここまで。実験的に何種類かの粘土を塗ってみたので、後日乾いた様子をチェックしよう。
それにしても、実際やってみなければ分からないことがたくさんあるものだ。課題もあるが、女性の私でも「自分たちで家を作ることは夢じゃないんだ」という確かな手ごたえが感じられたのが何より嬉しい。「本当に楽しくて簡単なんだ」というのが体験したスタッフみんなの偽りのない感想なのだから。全国各地から、遠く九州からも人が集う今度のワークショップで、誰もが同じようにこの画期的な工法の魅力を実感してくれるだろうと、泥まみれの手を見つめながら思っていた。