|
日本初のストローベイルハウス
First Straw bale house in Japan
栃木県益子町S邸 2001年1月完成
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
藁の家のこと
益子の家オーナー N.S . 2001年12月29日
待ちに待ってやっと完成した「藁の家」。今年2月末に引っ越し、あっという間に約10カ月が経過しました。引っ越しはしたものの半年ほどは棚作りなどの大工仕事、土木作業に終われ、無我夢中で毎日が経過していました。最近になりやっと新しい我が家での暮らしにも慣れ、少し落ち着きました。「藁の家」での生活の中で実感した事などを少し書き綴ってみました。設計中から一番気になっていたストローベイルの断熱効果に関しては、随分その効果を実感することができました。この夏、エアコンはほとんど使用せず扇風機で過ごしました。「あれっ。今エアコンつけてないの?」とよく聞かれました。さすがにあの日中の気温が38度の猛暑の時期、昼間は使用しましたが、1日中エアコンを使用していたマンション暮らしの夏とは大違いでした。立地条件や間取りも幸いしたのか風通りが良いのと、日ざし対策として昔ながらの簾を垂らしたのも相乗効果となりました。結果、電気消費量は狭いマンション暮らしの時とほぼ同じでした。実は、1軒屋だし消費量が跳ね上がるのではと心配していたので正直ほっとしました。冬は今年2月後半、3月と11、12月僅かしか過ごしていませんが、小さなファンヒーター2台で家中の暖房が可能です。我が家の場合、1Fが吹き抜けでロフトのような造りになっているので、2Fに暖気が届き、家中の温度がほぼ均一でとても過ごしやすいです。一度暖房してしまえばとても暖かです。でも引っ越し前は、「2Fも各部屋に暖房機具を用意しないとね。」と言っていたのですが、不要でした。
想像以上だったのが防音性でした。かなり本降りの雨にならないと雨音が聞こえず、家事やら読書などしていると全く雨に気がつかず「あれっ。雨降っていたの?」という事が何度もありました。おかげで洗濯物が被害にあっています。そして夜などはまさしく水をうったような静けさ。異空間にワープしたような気分になります。音楽スタジオの壁にもどうかと提案したくなるくらいです。
デザイン性に関しては、粘土、漆喰を塗って出来上がったうねった壁面、穏やかな凹凸、丸みは工業製品にはない手の温もりとなんとも言えない存在感をアピールし、外観はかなりの迫力です。遊びに来た友人たちには「この家の外観は絶対忘れない。頭に焼き付く感じ。」とよく言われます。また、内装については、ストローベイルの厚みによって出来た出窓や二ッチは、植物や小物のディスプレイの格好のスペースでもあり、この家の楽しみの一つとも言えます。我が家もいろいろ並べて楽しんでいます。
そして友人たちから「すごい木の香りがして気持ちいい。よくある新築の家の臭いがしないね。」と言われます。断熱はストローベイルを使用し、壁も漆喰やら粘土、藁を使っているのだからそのはずです。よく話題にあがるシックハウスは何処へ?我が家は全く無縁です。素材的に環境に優しい家であることはもちろん、人の体にも充分やさしい家だと思います。
また「藁の家」は、先に挙げたような機能面での効果を発揮しただけでなく、他にも沢山の収穫がありました。私達のような素人でも『藁の家』の建築作業に加わることができ、「これぞ家造りの醍醐味」ともいえるべき体験が出来たこと。そしてこの体験が糧となり、「自分達でできることはやってみよう。やればできる。」と言うわけでたくさんのアドバイスを頂きながら床、柱等木部の塗装、収納棚の作成、金具類の取り付けなど自分達の手で作業ができたこと。「藁の家」の不思議な力だと思います。
それから忘れてならない大きな収穫は「沢山の人との出会い」でした。建築に携わった方々、ワークショップの参加者などなど。まだまだ「藁の家のつながり」は続きそうです。
そして、私達の家造りにあたり実感させられたのは、「無駄を忘れた現代」というものでした。何でも分業、細分化が進み、莫大な情報量の中であらゆる商品がありそれを選び、買うだけですぐ満足を得る、無駄もないがおもしろみもない。そういう貧しい価値観の中で生活していた。家づくりに体する自分達の考え方も同様だった。我が家でいえばストローベイルの壁厚分、つまり余分に坪数を必要とする空間、この無駄な空間が大変重要で意味深いあることを。私達にとって、この空間を生み出すストローベイルとの出会いは『家を建てるにはこうでなければならない。』という私達の変な固定概念を取り払ってくれた。また物作りの原点である自分のアイディア、手作りが活かせる素材と出会ったことは大変意味深かった。そして想像力をも大変豊かにしてくれた。その作業行程においては、時間、手間、人手もかなり必要とし、プロから見れば無駄も多かったかもしれない。でもその中で物を造る喜び、共同作業、人とのネットワークの大切さ、物への価値観の変化など、得たものは測り知れない。そしてみんなで作ったこの壁がこの家の手作りの温もり溢れる外観を生み、壁厚が室内ではゆとりのようなものを感じさせてくれる。客観的にみると無駄と思える空間に面白み、大きな意義が隠されていた。
この家作りにあたり様々なことを考えさせられ体験しました。今もこの家が私達に想像力や刺激を与え続けており、今後もガーデニングや家具の製作など色々と積み上げてゆく楽しみを提供してくれるでしょう。一生楽しみながらこの家を育てたい。焦らず、ゆっくりと。