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ストローベイルハウスとは?
What is Straw bale house?
1999/11/14 朝日新聞記事より 執筆:日本ストローベイルハウス協会 馬上精彦
藁で作る究極のエコロジー・ハウス
「この藁は小さく軽い、そして多くの人々はその本当の重さを知らない。もし人々がその本当の価値を知ったなら、国家や世界を動かすのに十分な、人類にとっての革命が起きるだろう。」
これは自然農法の大家、福岡正信氏の著書「藁一本の革命」からの一文である。 「THE STRAW BALE HOUSE」というアメリカの本の巻頭に、抜文としてこの文章が英訳されて掲げられている。
今アメリカで、まさに福岡氏の啓示どうり、人類にとって革命的な藁の利用法が広がっている。それは藁で家を建てるという信じがたい建築方法である。
藁は日本では、古くから生活の様々な面で、有用な素材として使われてきた。縄、俵、莚、草、鞋、呉座といった藁製品は、日本人の生活に欠かせないものであった。
また日本建築において、藁は重要な材料であり、土壁や漆喰の繋ぎとして用いたり、屋根を葺いたりしていた。
藁とは、穂先に実った穀物などを収穫した後に残った茎や葉であり、いわば農業の副産物である。かつての日本は副産物をも無駄なく活用するきわめて高度なエコ文明社会であった。
皮肉なことに、藁は日本では見捨てられてしまった素材だが、アメリカでは、ストロー・ベイル・ハウスと呼ばれる革命的な建築の材料として脚光を浴びている。
ストロー・ベイルとは、家畜の飼料用に圧縮加工された藁のブロックのことである。この藁ブロックを積み上げて壁を作り、粘土を塗り漆喰で堅めると、シンプルで美しい家が出来上がる。
藁壁の家は壁厚が40〜50センチもあるため断熱効果に優れ、冷暖房エネルギーの大幅な削減が出来る。木材使用量が従来建築の1/3程度で済む。ローコストであり、セルフビルトも可能。100%自然素材の家で健康な暮らしを営むことが出来る。
「藁の家」の出現によって、自然環境に適応した21世紀の新しい生活スタイルが始まるだろう。
日本で第一号となる「わらの住宅」が来春、栃木県益子町に完成する予定。
「草の力藁の家」(INAX出版 2000/6/12発行)より 執筆:日本ストローベイルハウス協会 馬上精彦
ストローベイルハウスとはなにかストローベイルハウスとは「わら」で作る家である。 「えっ!わらで家が作れるの?」とだれもがいぶかり、すぐに「三匹の子豚」の物語りを連想する。
「家とは木やレンガで作るものだ。わらの家など狼の鼻息ひとつで簡単に吹き飛ばされてしまう。」というこの物語りの結論からは、建築材料とは強度のあるものほど良いという教訓が導きだされる。
しかしモノの強度とは、ほとんどの場合、素材の持つ「イメージの強度」であるといってよい。「堅いモノは強い、重いモノは強い」と思うのはイメージ強度の問題である。レンガは堅くて重い、わらは柔らかくて軽い、イメージ強度は最低レベルである。こうした固定観念のせいで、わらという世界中どこにでも豊富にある素材が、建築の主材料となることは史上あまり例がなかった
。
Straw Baleとは、わらを圧縮してロープで結んだブロックのことである。ちなみにBaleという単語を辞書で引くと、[【名】梱(こり)。俵。輸送用に圧縮梱包した一定量の商品。バインダーで結束したコーン、草などの梱。【動】...を梱(俵)にする。梱包する。]とある。日本でも、牧場の納屋などに積み上げられた干し草ブロックの姿を見かけたことがあるはずだ。
ストローベイルハウスとは、このわらブロックを積み重ねて壁を築く建築方法である。築かれたわら壁の表面に粘土などを塗り、耐火被覆とし、さらに漆喰(シックイ)などの材料を塗ることで耐水性の仕上がりとなる。
ストローベイルハウスを外観として見ると、わらブロックは土や漆喰で内部に塗り固められているので、わらで作られた建造物であると判断することは出来ない。こうして出来上がったわらの家は、充分な強度を持ち、堅牢で耐久性もある。100年近い歳月を経て使用されている例もある。
優れた断熱効果、100%自然素材、シンプルなデザインなど、多くの利点を持った革命的な建築方法である。
笑い話のようだが、唯一の欠点といえば家畜に家を食べられてしまうこと。これは実際に例のあったことらしい。
正確に述べれば、ストローベイルハウスとは壁部分がわらで作られた建築物であり、基礎 、床、屋根などの部分は一般建築に準ずるものである。
「ストローベイルハウス」とはアメリカで名づけられた名称であり、今後日本で普及する際、理解されにくければ別の名称を付けても良いかもしれない。私はわかりやすく人に伝えるとき、「藁壁建築(わらかべけんちく)」という名称を使用している。この方が解り易いという人もいる。
記録に残る最も古いストローベイルハウスは、1886年にアメリカのネブラスカ州Bayard付近に作られた小さなワンルーム(18平方メートル)のスクールハウスであった。
それ以前にも大平原地域では、あり余る牧草を使って開拓者達が仮設的な小屋を建てていた可能性はある。しかしわらをプレスしてブロックにするベイラーという機械が発明された記録を見ると、手動式のものが1850年頃、馬を動力にしたものが1872年に登場し、蒸汽機関式のものが1884年に発明されたとあるので、恒久的なストローベイルハウスが建てられるようになったのは、19世紀後半のことであろう。
これら初期の建物のうち何軒かは、風雨に耐えて今なお使用されているが、ローカルなものであったため、いつしか忘れ去られてしまっていた。その後1974年、土着民家の研究者Roger Welschにより「シェルター」誌(世界中の民俗的、土着的特殊建築を特集した本)に紹介されたことがきっかけとなり、リヴァイバルする。
1990年代以降、アリゾナ州ツーソンを中心にエコロジストや建築家たちが実験と研究を重ね、構造や工法に改良を加えて現代に蘇らせた。
現在では、耐震、耐火、耐水性など次々と厳しい建築法規をクリアーし、 住宅ローンや保険の適用が受けられる状況にまで達し、一般市民にも認知されたブームとなっている。
ストローベイルハウスは、セルフビルトの建設が中心なので、主にインターネットとワークショップを通じて世界各地に広がっている。
ストロー・ベイル・ハウスは究極のエコロジー・ハウスである。 木材資源の枯渇など地球規模での環境問題に直面している今日、建築においてもエコロジーは欠かせないテーマとなっている。
今われわれは、自然素材の家ではなく、有害な化学合成物質に囲まれた家に暮らしている。このような状況にいち早く気付いた人たちの間から、ストロー・ベイル・ハウスは普及し始めた。
化学製品、工業製品の拒否、商業主義建築の排斥といったポリシーに基づき、シンプル、ナチュラル、エコロジー、ローコストといった最先端のテーマを追った結果たどり着いたのが、ストロー・ベイル・ハウス建築なのである。
ストロー・ベイル・ハウスは、木材資源節約の有効な手段となる。あるデータによれば、平均的木材使用量は従来型建築の3分の1程度で済む。アメリカでは藁の利用率は25%程度で、残りは焼却されている。これを建築材料として利用すれば、139m2の家が年間300万棟建設できるという。
ちなみに日本では、約2町歩(約2ha)の水田から取れる稲藁で、毎年30坪ほどの家の材料が供給できる。
ストロー・ベイル・ハウスは、壁の厚みが45〜60cmもあるため断熱性に優れており、冷暖房エネルギーを大幅に削減できる。藁、土、漆喰という自然素材の家で健康な暮らしを営むことが出来る。
ストロー・ベイル・ハウスの建築方法は従来の建築方法に比べて簡単であり、セルフビルトも十分可能である。女性や子供も参加できる。今や日本では、家は業者から買うものとなってしまったが、自立した生活を取り戻すためにも自らつくる意義は大きい。
藁を建築の主材料にするということは、人類にとって革命的なことである。農業は、米や麦を食料として得ることを目的に営まれてきたわけだが、その副産物(今や不用物ともいえる)である茎や葉で家がつくれるのである。
藁は毎年採れるから、永続的に供給できる。食料と建材、「食」と「住」とが同時に獲得できる。ソーラーや風力エネルギーと組み合わせることによって未来の生活システムを築くことができる。
ストロー・ベイル・ハウスは、主にセルフビルドの建築として広まったので、作り手の創意工夫や地域性などによって様々な構造や工法が編み出されている。
構造は次の3種に大別できる。
1. 壁式構造(loadbearing)
開拓者たちがつくったヴァナキュラー(土着的)な方法。 直接藁壁で屋根荷重を受ける。 鉄筋や竹、木の杭などを配筋すれば、構造を強化することができる。
大型の建物や2階建てには不適当。 壁部木材の使用量が少なく、工法も簡単で利点が多いが、現在の日本の建築基準法では認可されない。
2. 非壁式構造(non-loadbearing)
現代版。従来の建築構造のため許認可が容易。 従来の建築構造(柱梁構造、2×4パネル壁構造など)の内側あるいは外側に藁壁を積み上げるのが一般的。
鉄骨やRC構造と組み合わせるなど様々な方法がある。
3.ハイブリッド(hybrid) 1と2の折衷方式。
一部を壁式とし、一部を柱と梁などで組む。
工法はそれぞれの構造に対応する。1の壁式構造は、工法が簡単なのでセルフビルドに最適である。私はこの方法を「ヴァナキュラー・タイプ」と呼んでいる。
ヴァナキュラー・タイプがストロー・ベイル・ハウスの最もオリジナルな工法であるといってよいだろう。
ベイルを積み上げて壁を作り、ストロー・ニードルと呼ばれる鉄棒で細ひもを壁に通し、内と外を縫うように縛って補強する。
裁断したわらを粘土に混ぜてベイル壁に塗り、土壁で漆喰仕上げの下地を作る。下塗り、中塗り、上塗りと3工程で仕上げるのが最良である。これは日本の伝統的な土壁塗りの技法と同じである。
仕上げの漆喰に天然鉱物の顔料を塗るとフレスコ反応が起こり、アースカラーの美しい壁となる。
ストロー・ベイル・ハウスは、他の建築方法に比べて左官工程の作業が多いのが特徴である。
2は一般的建築工法に準じてつくる構造である。藁壁部分の工法は1と同様である。現在の日本の建築基準法ではこの構造が適当である。
アメリカでは大半の州で1の構造が認可されている。今後、ストローベイルハウスの利点を生かすためにも、1の構造認可を取っていく必要がある。
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